Dress-up Doll




 イギリス人は慈善事業や寄付をよく行う国民性である。


 特に爵位をもつ貴族は何かイベントがあるときには伝統的に出資するのが当然の事だ。



 女王の配下に傅いて裏の仕事を担っていても、ファントムハイヴ家も表向きにはもちろんその例外ではない。


 その慈善事業は大抵イベント会場として屋敷を提供し、

 孤児院の児童や労働階級の市民などを招いたホームパーティを開催するのだ。





 そんな年間イベントのひとつであるイースターを翌日に控え、タウンハウスではパーティの準備に追われていた。



 イースターとはキリスト教会の重要な祭事で
 主イエスの復活を記念して満月直後の日曜日に行なわれるイベントである。





「え?・・私も仮装をするんですか?」


 イースターエッグが入った籠を持ったまま、きょとんとした顔をしたアグニにセバスチャンは笑いかけた。



「ええ。
 屋敷の者は主人を含め、使用人の全員が仮装をします」



 そんなふうに話をしながらもセバスチャンは手を止めておらず、それを見たアグニも装飾を手伝う作業に戻る。


 ファントムハイヴ社の主力売れ筋商品、ビターラビットの首に色とりどりのリボンを巻いていく手つきは鮮やかだ。



 おびただしい数のそのウサギのぬいぐるみは、全て招待客へのプレゼント用である。




「アグニさんの衣装もご用意しましたので、作業の後で試着しましょうね」



 屋敷の一員として認めて接してくれるセバスチャンの態度に、嬉しそうにアグニは微笑んでうなずいた。





*****






 そのパーティの準備作業が終わったのはそれから数時間後、もう満月が南の空高く中天した夜が更けた頃だった。



 編みあげの黒いブーツをこつこつ鳴らして、ゆっくりと戸惑うような歩き方でアグニはセバスチャンの前に現れた。



 アグニは黒いボタンのついた白いシンプルなスタンドカラーのブラウスに、

 胸元の大きく開いた黒い長袖のパフスリーブワンピースを重ねて着ていた。


 膝丈よりも少しだけ長いスカートの下の脚にはレースのガーターベルトを着け、
 白いストッキングを太股の上部で吊って穿いていた。


 さらにそれに大きな飾りボタンが4つ付いた丈の長いレースのエプロンをつけ、

 頭にはエプロンとおそろいのデザインのヘッドドレスを被っている。




 つまりアグニはメイド服を着ていたのだが、それをまったく隙のない輝くような笑顔でセバスチャンは出迎えた。


 本当は自分が今まで経験させてきたプレイから考えると、アグニが素直に着替えたことに少しだけ驚いていたのだが。




「・・・こ、これを着て本当に給仕をするんですか!?」



 しかし開口一番に泣きそうな顔をして詰め寄ってきたアグニに、セバスチャンは安心して嬉しい気分になる。

 てっきりいままであれだけ恥ずかしいことをされたのに彼は感じていない、鈍い性質かと予想していたからだ。


 意外性を好むセバスチャンにとって、手を加えても面白みがない相手は価値がない存在だ。




「なにか不都合でもありますか。その服は機能的なデザインだと思いますが?」



 たしかにメイド服は給仕するのに特化した動きやすい衣装だが、アグニが言いたいのはそういうことではないだろう。


 しかしごく自然な口調でもっともらしくそう言ってやると、アグニは呆気にとられたようにぽかんと口を開けた。




「それにソーマ様がされる仮装は魔法使い。その従者といえば黒猫に決まっています」




 そうアグニの着ているメイド服は頭にかぶったヘッドドレスに黒い猫耳が付き、

 スカートからはこれまた黒くて長い尻尾が垂れ下がっていたのだ。


 つまりとうに成人を迎えた長身の男が女装して、しかも愛らしい猫をイメージしたコスプレをしていることになる。



 これは恰好自体が恥ずかしいというのもあるが、こんな姿を人目に晒すのは見苦しいにも程がある。


 だからどうにか拒否の言葉を考えて言おうとしたアグニは、そこであることに気がついた。




「!・・セバスチャン殿、その格好は?」


「この服は坊ちゃんが仮装される吸血鬼の眷属、コウモリをイメージしたものです」




 セバスチャンは白いウイングカラーのドレスシャツに、

 ファントムハイヴの家紋がはいったネクタイピンで飾った黒いアスコットタイを締めていた。


 そのすぐ上にはぴっちりとした漆黒のベストと、さらに燕尾服に似ているが変わった形状の裾の上着を羽織っている。

 まるで背中から袖口にかけてギザギザした羽が生えているように見えるその上着は、
 セバスチャンが言ったように確かにコウモリの様であった。


 そして下には黒いフレアーな膝丈までのスカートを着て、
 アグニと同様にレースのガーターベルトで黒いストッキングを吊って穿いていた。



 その着こなしがあまりに様になっていたものだから、
 セバスチャンも女装していることにアグニはすぐに気がつかなかったのだ。




「くす・・とてもお似合いですよ。アグニさん」


「そんなとんでもない!
 私などより、セバスチャン殿の方がずっと似合っておられます」




 自分だけがイロモノな仮装をするのではないと解かると、アグニの態度はあきらかに軟化した。


 その感情が起伏するままにころころと変わる表情は、可愛らしくて本当に見ていて飽きない。




「しかし私のこの服はメイド殿のものではないのですか?」


「いいえ。ファントムハイヴ家支給のメイド服を参考に、私が縫ったものですよ」


「セバスチャン殿が縫われたんですか!?」



 揺れる蝋燭の頼りない光の下で銀の瞳が、驚きに見開いてから瞬いてきらきら輝いた。

 さっきまでとはまるで違った様子を見せるアグニの感情が読めず、セバスチャンは戸惑う。



「ええ。型紙はあなたのサイズに直して作ってみました」




 メイド服はアグニにぴったりの丈で、メイリンの物をそのまま転用したのではないと一見しただけで明白だった。


 ファントムハイヴ家にはニナ・ホプキンスという外注の専属仕立屋が居るが、

 彼女は女性と15歳以下の少年にしか興味がないので男用サイズの服など縫ってくれない。


 それなら自分以外に誰が縫うのだと、そんな解かりきったことを聞くアグニのことがセバスチャンは解からなかった。



「でも、いつの間に私のサイズを測られたのですか?」



 だからアグニが話題を転換してくれたことに、正直ほっとして密かに息を吐く。



「・・嗚呼、それくらい測らなくても解かりますよ」


「え?」



 問われたセバスチャンは微笑みを浮かべ、すっと手を伸ばしてアグニの腰を抱くように自分の方へ引き寄せた。



「こんな風にして・・いつも抱いていますからね」



 それに目を見開いた後で、アグニは頬を赤く染めながら照れ隠しのように顔を逸らせた。



 腕の中で恥じらって俯く長身のメイドを抱きしめたまま、セバスチャンは機嫌よく目を細めて唇を緩める。


 肩にフリルのあるシンプルな白いエプロンは、上半身の下から半分を覆って腰のところでリボン結びにされている。

 だからアグニの普段は緩やかな衣装を着ているがゆえに解からない細い腰のラインが、
 今ははっきりと解かるのも視覚的に楽しい。




「セバスチャン殿、どうかされましたか?」



 声につられて見ると目線の先には首を傾げたアグニ、きょとんとした目でこちらを真っ直ぐに見つめている。



 そのあまりに警戒していない無防備な顎を捉えると、遠慮なく唇を重ねた。


 驚いて開いた唇から強引に舌を潜り込ませ、猫耳付きのヘッドドレスを被る頭部を抱えてやる。

 するとますます互いの身体が密着し、伝わってくる温かい体温や速くなっている鼓動にうっとりした。


 舌を縺れ合わせて唾液を吸ってキスに没頭しつつも、セバスチャンはメイド服のブラウスに手を這わせはじめる。


 ブラウスは薄い布地の綿製なので、服の上からまさぐっただけで乳首の位置がすぐに解かってしまう。

 薄い布越しにまだ柔らかくて小さな尖りを指の腹で擦ってやると、愛撫されるのに慣れたそれはすぐに芯をもつ。


 手早くボタンを外すとブラウスの中に手を入れて胸の肌を撫で、指先に当たった乳首を摘み上げて捏ねて押し潰してやる。



「ふ・・んんっ・・ん・・はぁっ」


「アグニさんは、相変わらず感度がいい方ですね」



 唇を解放してからぷっくりと膨らんできた乳首を弄りながら揶揄してやると、頬を染めて恥ずかしそうに唇を噛む。



 その仕草にますます苛めたくなって、乳首にちゅっと音をたてて吸いつくと口内に取り込んだまま舌で転がした。

 もう片方に手を伸ばしてみると、まだ触ってもいないのに勝手に膨れてきているのが微笑ましい。



「ふぁ・・んっん、あ・・はぁ・・っ」


「ちゃんと衣装を着られているかどうか、チェックして差し上げましょう」



 無造作にスカートをめくり、レースのガーターベルトで白いストッキングを吊っている長い脚を露わにする。


 それに慌てたアグニがもがくのを気に留めず、セバスチャンは眉をしかめていかにも意外そうな声を出した。



「おや、下着が・・この服に合うように選んだものをいっしょにお渡した筈ですが?」



 アグニがスカートの下に穿いていたのは、いつもどおりの質素な下衣の布だった。



「・・し、下着まで女性の物は流石に・・・・・・」


「完璧を目指してこその仮装でしょう?
 それにガーターベルトの着け方も違っていますよ」



 セバスチャンは畳みかけるように言葉を次ぎながら、ガーターベルトのサスペンダーの部分に親指をかけてきた。

 そのまま親指と人差し指で掴んでストッキングを外し、次にはあろうがことか下衣を脱がそうとするではないか。



「・・ま、待ってください。
 教えていただければ自分で着ますからッ!」


「そんなに恥ずかしがらなくても、私がして差し上げる方が速いです」


「ッ・・・////」



 声にならない悲鳴をあげてアグニが涙目で見てくるのも気にせず、さっさと下衣を解いて脱がしてしまう。


 しかしさっき外したストッキングをガーターベルトで留め直したところで、セバスチャンはふと手を止めた。



「アグニさん、お渡した下着はどこです?」


「・・その、さっき着替えていた部屋に・・・・」



 つまりはなからアグニは女物が嫌なので、とりあえずメイド服は着て表面だけで取り繕うつもりだった訳だ。


 特殊な趣味でもない限り一般の男性ならそれが当たり前の思考で、
 メイド服を素直に着て女装してくれただけで褒めてもいいくらいだが。


 セバスチャンはいかにも誠実そうなふりをして、自分を騙そうとしていたアグニに腹が立った。




「やぁッ!あっ・・はぁぅ・・・っ」



 激情にまかせて乳首への愛撫で半ば勃っていた性器を握ると高い嬌声が漏れ、びくりと大きくアグニの全身が揺れた。


 滴っている先走りを掬ってぬるぬる滑らかに指を動かし、慣れた手つきで鈴口から竿の方へと塗りひろげていく。



 アグニはやめてくれと懇願するようにセバスチャンの肩を掴み、頭を振って快感をやり過ごそうとしているが。


 くちくち濡れ音を立てながら刺激を与えてやるたびに腰が揺れ、膝からも力が抜けてもう立っているのさえ辛そうだ。



「・・・は、あぁ・・もっ、服が・・汚れます・・・ッ」


「こんなときに服の心配ですか?」



 アグニにしては珍しく抵抗が強いうえに紡がれた無粋な台詞に、セバスチャンは嘆息の交じった呆れ声を出す。


 すると必死な形相でふるふると首を振って、アグニは喘ぎに喉を引き攣らせながらも口を開いた。



「・・だってセバ、スチャンどのが・・くだ、さった服な・・のに・・・ッ」





 ここでようやくアグニがこのメイド服を自分が縫ったと言ったとき、瞳を見開きつつも輝かせた理由を察する。



 それがどんなものであろうとセバスチャンに物を贈られたということが、彼にとっては嬉しかったのだ。


 だからこそそれを大事にしたいと、汚したくないとアグニは訴えているのだ。




「アグニさんは本当に可愛らしい方ですね」



 念のために予備のメイド服を何着かセバスチャンは縫って用意していたし、汚れても後で洗濯すればいいだけの話だ。


 でもアグニの素直で健気な気持ちを尊重したかったし、少しだけ腹いせに恥ずかしいことをしてやりたくなっていた。




「それなら、これをこうやって持っていてください」



 そう言いながらセバスチャンがアグニの手に握らせたのは、たっぷりたくし上げたスカートの裾だった。


 すると手渡されて反射的に受け取ったものの、
 自らスカートを捲くるという慎みがない仕草に気づいたアグニは手を下ろそうとするが。



「・・おや、汚れてしまいますよ?」



 セバスチャンがすかさず注意してやると、慌てたように自らスカートを掴んで腹の辺りでまとめて持ち上げる。



 ついで壁に背をもたれ掛けさせて姿勢を安定させ、片膝を持ち上げて脚を抱えて大きく広げさせる。


 すると激しい羞恥に真っ赤に染まった頬をして、アグニは潤んだ瞳で縋るように上目づかいで見てくる。


 その艶っぽい表情を眺めながらセバスチャンは、すっかり丸出しになった秘所に手を忍ばせていった。




「ひっ・・そんなにし、ないで・・くださいっ」



 透明な滴を零し続けている先走りのぬめりを指に絡め、尻の狭間に息づく蕾に塗りつけてやる。


 簡単に馴らすだけで解れた粘膜の入り口は、待っていたかのようにセバスチャンの添えられた2本の指を受け入れた。



 中で指を曲げて粘膜を抉りながらぎりぎりまで引き抜き、隙を狙って指を増やしては根元まで挿し込む。



「あぁあ・・あっ、あ、そこ・・らめッ」



 腫れた前立腺を確かめるように粘膜の襞ごしに指の腹で擦ってやると、膝をがくがくさせて甘く高い声を漏らした。


 しかし口からは拒絶の言葉をはいている癖に、セバスチャンの指を突き入れられた尻は卑猥に揺れている。


 3本まで増やした指でぐりぐりとなかを掻き交ぜて耳元に息を吹き掛けると、綺麗に耳の先まで赤く染まった。



 可愛らしい反応に堪らなくなって指を抜くと、セバスチャンはスカートを押し上げていた己の男根を取り出す。



「・・では、挿れますね」



 そう宣言すると手はスカートを持ち上げたまま、誘うようにセバスチャンの方へアグニは腰を突き出してきた。


 その素直さに愛おしさを感じて微笑むと、曝け出された蕾に先端を押しつけてゆっくりと挿入していく。



「ん!あぁっ・・・ふぁぁ、は・・あぁんッ」



 男根がじりじりとふっくらと充血した襞を掻きわけて奥に向かって進むにつれ、
 増してくる圧迫感と質量にアグニの表情は歪む。


 でも涙の溜まった瞳は恍惚にとろりと溶けて、
 余裕のない息づかいと嬌声の漏れる口の端からは制御の出来なくなった唾液が滴っている。




「・・は、ぁあ・・あっ、あっ・・・ひゃぁんっ」



 動きはじめたセバスチャンに合わせて揺れる身体に、
 すっかり乱れたメイド服がまとわりついている様子はいかにも淫らだった。


 ゆらゆら揺れているアグニの腰を掴んでセバスチャンがぴったり身体を寄せると、

 白と黒のストッキングに包まれたすらっとした脚どうしが扇情的に絡み合う。


 互いの腹の間に挟まれた性器がそれで擦られたのか、眉を切なげに歪めるのを見て更に欲情を煽られた。



「・・っ、アグニさん」



 快楽に翻弄されて喘ぎながらも貪欲に締めつけてくるアグニの粘膜に、セバスチャンは衝動を抑えられなくなる。


 激しい抽送に耐えつつもいまだスカートを持ち上げている手を外させ、

 腕を伸ばしてアグニの両脚の膝裏を抱え上げると体勢を変えはじめた。



「?・・っあ、ぁ、・・・なに、して・・っ」


「後ろからの体位にすれば持っていなくてもスカートが汚れないでしょう?」


「や、まってくだ、さぁ・・あぅ・・・ん、ん・・」



 男根を軸にして繋がったままの身体を回すと、褐色の身体が細かく震えて表情が歪んだ。


 襲いくる快感に耐えるその表情は目元が赤く染まり、寄せた眉根と長い睫毛が何ともいえないほど艶めいている。



 動きやすい体位にもちこんだセバスチャンは、スカートをはぐって引き締まった腰をじかに掴んで突き込みはじめた。


 縋るものがないアグニは壁に手をつき、
 身体を支えるために脚を開いてこちらに長い猫の尻尾のついた尻を突き出している。



「ぁぁあ、や・・っあ!」



 前に手を回して敏感な性器の先端から根元にかけて指で挟むようにして撫でてやると、

 大きく開いた脚が小刻みに震えて腰が誘うように高く上がってきた。


 しなった背に胸板を押しつけ、セバスチャンはうっとりとした表情で剥き出しのうなじを舐めてやる。



「とても淫らで可愛らしいですよ。そんな仕草どこで習ったんです?」



 弱い耳元に息を吹きかけるようにして声を注ぎ込むと、ぴくぴく腰を震わせてアグニは身じろいだ。


 そして銀のピアスが嵌まった耳たぶを口に含んで甘く噛みながら、

 男根を先端のぎりぎりまで抜き出し、一気に突いてやると切羽詰まったように全身を揺する。



「やぁ・・も、らめですっ・・。ひゃ・・あぁ、あぁぁんッ!」


「く・・ッ、中に出しますよ・・!」



 アグニが一際高い声で悲鳴を上げると、性器が痙攣して白濁が勢いよく放たれる。


 同時に肉棒を搾り取るように内壁が収縮し、セバスチャンは中のいい部分を狙って射精してやった。



「あっあ・・まだ、なか・・・びくびくっ、でてっ・・」



 熱い飛沫を受け止めて身体を震わせるアグニは全身の力が抜けたのか、壁に沿ってずるずると腰を落としていく。


 しかしアグニが床に崩れ落ちる前に抱きとめ、セバスチャンは繋がったまま背後から包み込むようにして唇を重ねた。





*****






 行為が終わってから服を脱いですっかり身体を清めた後のベッドの上で、

 セバスチャンはレースに飾られた、いさかいの元凶とも言える白いパンティを取り出した。



「これもあなたのために縫ったものなんですよ。穿いてみませんか?」


「・・はい」



 あまりに薦められるのでアグニはついに諦め、戸惑った表情を隠すようにセバスチャンに背を向けて座った。


 手渡されたパンティを穿こうと纏っていた下衣を解き、片脚をあげたところで焦がれるような熱い視線を感じた。



「あ、あの・・・・」


「アグニさん。私のことはお気になさらず穿いてください」



 口元に笑みを浮かべたセバスチャンは、ベッドに座ってこちらに向けた目を逸らす気などまるでない様子だ。


 いつまでも埒が明きそうにないので、視線を意識しないようにアグニはパンティを素早く穿いた。




 そのパンティは女性用なのに股上が深く、脚の付け根からへその下までをすっぽりと包んでくれた。


 性器もちゃんと納まって清潔そうな雰囲気で、レース過多なデザインを除けば悪くない穿き心地かもしれない。


 それになんであれ恋人であるセバスチャンに、しかも手作りの品を貰えるのがアグニは嬉しい。



「お気に召しましたか?」



 いつの間にかすぐ近くまで寄ってきたセバスチャンに尋ねられ、頬を染めながらうなずいた。



 背後から抱き寄せてくる腕に捕まりながら、アグニはゆったりと微笑む。


 行為の前は恥ずかしくてとても無理だったけど、いまなら数時間前の過ちを謝罪してお礼が言えそうだと思った。







おしまい