朝食の仕込みを終えて部屋に帰ってみると、予想どおりに魔力を仕込んだ縄をアグニは解けていなかった。



 近づいてくるセバスチャンを見るなり、逆海老に縛られたまま無様に逃げようとしたのを捕まえる。


 脚の縄を解いてズボンを下衣ごと脱がすと、長く縛られていたせいで動けない身体をベッドに仰向けにしてやった。


 そして今度は剥き出しにした両脚の膝をそれぞれ折り曲げ、別々に縄を通してふくらはぎと太股を一纏めに縛る。

 それから両脚を縛った縄にまたそれぞれ別の縄を通し、臍の高さでその縄を交差させて身体に巻きつけた。




「嫌です!こ、こんな・・・」



 その縄を胴の方へぐっと引き上げた瞬間、アグニは驚いたような声をあげて激しく不自由な身をよじらせた。


 胴と脚を接続するように巻かれた縄が両脚を大きく左右に割り、股間をすっかり剥き出しにしていた。

 まだ反応していない性器とその下にある陰嚢の膨らみ、そして薄く色づいた後孔がすっかり晒されてしまう。


 そんな恥ずかしい秘所を丸出しにされた格好で縛られ、身体を固定されるのが耐えられないのだろう。



「セバスチャン殿、お願いです。許してくださいっ」


 アグニは瞳に涙を浮かべて上目づかいで見上げつつ、細かく身を震わせて必死に許しを請ってくる。



 しかしその叱られて哀願している子供のような稚い仕草と表情に、セバスチャンはかえって嗜虐心をそそられた。


 身体を縛っているより細めの縄を新たに2本取り出し、2本とも細腰を一周させて腰骨の上部で括る。

 腰の真ん中から余っている4本の縄を2本ずつ分け、2重にして股間に下ろして通していく。


 そして性器の直前で2重の縄を交差させて陰嚢を挟むと、アグニはその刺激に再び抵抗するように身をよじらせた。



「ひッ!うぁ・・や、やめてください!セバスチャン殿っ」


「おとなしくしなさい。
 大丈夫、たっぷりと可愛がって差し上げますから」



 逃げようとした腰を引き寄せ、股間から尻の割れ目に通した縄を掴んで背中にぐいっと引き上げてやる。



「・・・ひゃあん!」


 縄が敏感な尻の谷間を通っていやらしく股間を這い擦る感触に、アグニは高い声をあげて全身を震わせた。


 その縄を背中でいまだ両腕を括っている縄の間に通し、股間を締めつけるようにきっちりと固定してやる。



 アグニの割り拡げられた股間を正面から見ると、2重の細い縄が秘部の肌に食い込んでいる様子がよく解かる。

 股間を縄が動くと性器の根元と陰嚢それに後孔と、粘膜に近い薄い敏感な肌が擦られる仕組みだった。




「ふふ・・とても淫らでいい格好ですよ。 
 少しでも身体を動かすと、縄が擦れるでしょう?」


「あぅぅ・・」



 耳元に囁いて銀のピアスごと耳たぶを食んでやると、アグニは身を震わせて刺激に耐えるように唇を噛んだ。


 毛羽を取り去ってあるとはいえざらざらした縄目に擦られるのはよほど強烈なのか、性器はすぐに反応を示し出す。

 すでに半ば勃ってきてる丸い性器の先端からは、とろとろと粘性の透明な先走りが滴り始めていた。



 しかし刺激を待ちわびるそこには敢えて触れず、セバスチャンは縛ったまま上半身に手を伸ばした。


 上着を肌蹴ると厚みのある胸筋に縄が直接に食い込み、肉が女の乳房のように隆起して乳首が強調されて見える。

 若い肌には適度な柔らかさと弾力があり、縄と縄の隙間では肉が盛り上がっているのが魅力的だった。




「はぁ、あ・・ぅんっ・・・」



 両手の指でそれぞれつんと上を向いている左右の乳首を摘まみ、同時に押しつぶすように揉んでやる。

 乳頭を摘まみあげて強めに擦ってやると、そこはすぐに熟れたように膨らんで赤く色づいてきた。


 硬くなってきた乳首を指先でころころと転がし、先端をきまぐれに引っ張ったり爪を立てたりしてやる。



「・・・あ、あぅ、ん・・やぁ」


 手袋をしたままの堅い指先で乳首の薄い皮膚を弄られて痛い筈だが、アグニはそれでも切なげにうめくだけだった。

 下手に身体を動かすと秘所が擦れて縄の刺激を受けてしまうので、喘ぎながらも必死に耐えているのだ。


 後ろで縛られたままの両手は刺激に耐えるように強く握り締められ、褐色の肌は汗でしっとりと潤っていく。




 しかししばらくすると身体の震えや表情、そして息の吐き方などでアグニが追い詰められてきたのが解かった。

 縄の材質は麻なので水分を吸収しやすく、湿ると肌に食い込んでだんだんと苦痛をも与えていたのだ。



 性器の根元や陰嚢を締めつけてきた湿った縄の刺激に、堪らず首を振る痴態を眺めながら揶揄してやる。



「ふふ・・アグニさん。

 貴方が濡らすから縄の色が変わってきていますよ」


「・・なッ、あぁ!」



 そして濡れて角度を帯びている性器を急に握り込んでやると、途端に驚いたような声をアグニは張りあげた。




「・・ん、はぁ、や・・もぉ、やめてく、ださ・・・
 あ、あぁっ・・セバ、スチャンどのぉっ」



 そのまま手の平で竿を包んで緩急をつけて扱いてやると、抗議の混じった悦声が断続的に漏れる。


 そして性器を扱かれる刺激に耐えられなくなったアグニは、ついに腰を突き出して身を揺すり啼き出した。

 すると擦れた縄に容赦なく急所を苛められ、苦痛と快楽の入り混じった堪らない感覚に悶える。




「初めて経験する縄なのにぐしょぐしょに濡らして、
 孔にまで垂らしてはしたない人間(ひと)ですね」


「あぁッ!や・・・ひぁ、あぁ・・あ、あッ」



 耳元に声を注ぎながら透明な粘液が垂れる敏感な先端の小穴を指先で抉ってやると、高く裏返った嬌声があがる。

 窪みを指先が抉るたびにアグニは腰を跳ねさせ、それに伴って股間はますます縄に擦られて煽られていく。


 みるみるうちに紅く染まった顔が顕著に歪んで、灰色の瞳からはぽろぽろと涙がとめどなく零れ落ちた。


 苦しむアグニの様子を見てとったセバスチャンは陰嚢の膨らみを揉みしだき、性器を擦る手の動きを速めてやる。




「あ、あぁッ・・こんな、の・・やぁッ!あぁあ―― ッ!」




 するとアグニはひときわ高く掠れた悲鳴じみた声を張り上げ、引き締まった背を弓なりに反らして達した。

 白濁色の水滴が粘ついた糸を引きながら褐色の肌を滴り落ち、派手に飛び散ってシーツを濡らす。




「はっ・・ぁう、はぁ、はぁ・・・っ」



 荒い吐息に誘われるようにアグニの顔を見ると、唇を喘ぎの形のまま開いて熱を帯びたうっとりした瞳になっている。

 納まらない熱に忙しなく喘ぐ口元には僅かに白い八重歯と紅い舌が覗き、それがとても卑猥だと感じる。



 息をするたびに震えている喉が視界に映り、衝動が抑えきれずにセバスチャンは本能のままに噛みついた。




「・・ああっ、ん・・やぁっ」



 くっきりと首筋に残った歯型を労わるように舐めやると、びくびくっと細かく全身を震わせる。

 こんな刺激にさえも快楽をおぼえるアグニは、なんて淫らでマゾヒスティックな人間(ひと)なのだろう。


 熱に捉えられたままの泣き濡れた瞳で見上げられると、さすがのセバスチャンも堪らなくなってきた。


 もっと啼かせて支配してやりたいという欲望が湧き起こり、緊縛されて開かれたままの股間に手を伸ばす。

 肌に食い込んでいた股間の縄だけを解いてやると、露わになった尻の割れ目の奥に指を這わせた。



「・・アグニさん。
 ここ、欲しくて疼いていらっしゃるでしょう?」


「い、嫌ですっ・・・もぅ、や・・やめてくださいッ」


「嘘ですね。
 こんなにひくひくさせて、身体は欲しがっていますよ」


「あぁ・・ッ!」



 揶揄しながら不意打ちのように後孔に中指を挿入してやると、アグニは背中をしならせて高い嬌声を零した。


 ゆっくりと内壁を擦りながら埋め込んでやると、その指の動きを止めようとするかのように粘膜が締まる。




「私の指をこんなに締めつけて、いやらしいですね」


「・・も、やめてっ・・やめて、くださぁ・・ぁあ、あッ」



 わずかに指を引いたり突き挿れたりするたびに、ひくつく後孔を見てセバスチャンは愉快そうに笑った。


 浅い場所で抜き差しを繰り返すと濡れた音が後孔から漏れ、それに堪えかねるように頬を染めて首を振る。

 しかしアグニの灰色の瞳はすっかり涙で潤んで蕩けきっていて、自分を誘っているようにしか見えなかった。


 指を増やして奥まで挿し込んで抜き差ししてやると、濡れた卑猥な音がますます酷く部屋に響きわたる。




「はあぅ!あ、あ、ふぁ・・あ、あんッ!」



 ふいに絡みつく粘膜の中で指に触れたしこりをぐっと突いてやると、ひときわ艶めいた嬌声が部屋に響いた。

 粘膜がすばやく収縮して銜え込んだ指をきつく食い締め、達したばかりの性器が透明な滴を滲ませる。


 セバスチャンは締めつけてくる感触を楽しむように、指をくっと折り曲げてそのしこりを何度も抉ってやった。



 でもアグニに絶頂が近づいているのを察すると、前触れもなく指を後孔から引き抜いてしまう。

 急に絶えた刺激に切なそうに眉を寄せるのを笑い、今度はすぐに自身の欲望をそのひくつく後孔へ突っ込んだ。




「あぁッ!もっやぁ、あ・・・あ、あぁぁ――ッ!」



 性急なペースで一気に奥まで拡げてやると、アグニはぼろぼろと涙をこぼしながら全身をびくびく跳ねさせた。

 後孔を弄られて切羽詰まっていたらしい性器から白濁を滴らせ、耳まで紅く染まった顔が泣き崩れる。



 しかしアグニが達している間もセバスチャンは挿入を止めず、男根が全て収まると突き上げを開始した。




「・・あ、ぁあ!ひぁ・・・
 もぉ・・ゆるし、てっくださ・・いッ」


 啼いて唯一自由に動かせる頭を振って懇願するアグニに、セバスチャンは口元を歪めて不機嫌に眉をひそめた。


 不自由な肢体でも抵抗しようというのか、縛られたまま大きく開かされた脚を震わせながら手指をもがかせている。

 しかし拒絶するアグニの意思とは裏腹に、粘膜は男根が喰い千切られそうなほど貪欲に絡みついてくる。



 いつまでも嫌がるアグニを疎ましく思いながら、セバスチャンはやけくそ気味に腰を揺すって抜き差ししてやった。

 汗にぬめる指で尻をわし掴んで抜けるぎりぎりまで性器を引き、勢いよく奥まで何度も突き上げてやる。


 太く長い肉棒が後孔を押し拡げながら突き刺さるたび、ずぷっと生々しい濡れ音が部屋に響きわたった。




「ほらアグニさん、悦いのでしょう?
 否定しても、下の口が締めつけるから解かりますよ」


「・・・あぁ、あん、やぁぁ・・・あぁ、あぁんッ!」



 素早く腰を動かして乱暴に突いてやると、もう片方の手で掴んだ濡れきった性器がびくびくと波打つ。

 そして与えられる強烈な刺激に泣きじゃくり、いつも以上に悦がって艶やかな喘ぎ声を上げ続けるアグニ。



 満たされていくサディスティクな征服欲に、セバスチャンは興奮に乾いてきていた口唇をぺろりと嘗めた。



 自分の動きに反応して途切れなく上がる嬌声は甘美で、本当に耳に心地よくていくらでも聴いていたい。

 そしてこの柔らかくて熱い粘膜を己の肉棒で埋め、アグニを永遠に喘がせていられたらいいのに。





 ふと手に引っかかる異物にセバスチャンが視線を落とすと、それは緩んで解けた脚を縛っている縄であった。


 こういう物理的に確かなものでアグニの心も縛れたら、自分の方に向けさせることが出来るだろうか。



 今宵の淫らな復讐の記憶はいままでの関係を損なうのが面倒なので、アグニには忘れて貰うつもりだったが。

 彼の心に自分の存在をつなぎ止める可能性があるなら、淫夢として記憶させてやろうかと考えてしまう。





 自分がアグニに抱いているこの激しい感情の正体は何なのか、ただ単に手に入らない者への執着なのか。

 そんな自分でもよく解らない想いに揺るがされ、心がざわつくのがセバスチャンは堪らなかった。



 しかしその感情の名前は悪魔として生きてきたセバスチャンには、ほぼ思いつくことなど出来ない代物。





 それは人間(ひと)ごときに心を砕かない筈の悪魔が、初めて人間(ひと)に対して抱いた恋愛感情だった。







おしまい